11月末の講堂朝礼で私は「先攻後攻挨拶でホイ(グリーティング・ゲーム)」の勝負を全校生徒に挑むと宣言しました。終業式ではなくまだ2学期が終わっていないところで提案することに意味があったのです。終業式までの1ヵ月でまだ行動するチャンスが残っているからです。
私はこれまで一貫して「元気で明るい愛徳学園」を目指してきました。1日のうち、起きている時間のほとんどを過ごす学校は楽しいところであるべきですし、本来学ぶこともワクワクすることの連続です。その学校生活を充実させるには学校全体が明るい空気で包まれていることが大前提です。朝から難しい顔をして声にもならない挨拶ではまったく楽しくないですし、何より心が平和でありません。そういうわけで、年度はじめに掲げる学校目標に「笑顔」や「挨拶」という言葉がちりばめられていることは重要なポイントで、私も折に触れて語っているところです。
もちろん、愛徳生はよく挨拶をしますが、同じするならもっと楽しく、さらに前向きにこの挨拶が飛び交った方が絶対にいいと思っていました。そんな時にふと頭に浮かんだのがこのゲームです。何でも遊び心でやってしまうと盛り上がるものです。今回は我ながらなかなかなグッドアイデアだったと思っています。そして、何よりも素晴らしいのが、それをすぐに「よし、やってみよう」と言わんばかりに実践する愛徳生の素直さと行動力です。
講堂朝礼で提案した日の昼休みに廊下を歩いていると、体育の授業に急ぐ高3の後藤さんと小嶋ソフィアさんが、私を追い抜きながら「こんにちは」と笑顔で挨拶をしたあと、「私たちの勝ちですね」と言って走り去っていくのです。後方から不意を突かれてあっけにとられましたが、もう完敗、感服です。校舎内を走らないという部分はさておき、聞いた話をすぐに行動に移すというのは誰にでもできることではありません。それも最上級生から実践するというのが嬉しいことではないですか。その翌日には高1の森脇さんが、校門から校舎に向かって歩いていた私に、まだ遠くから「さようなら」と挨拶した後、すれ違いざまに「勝ちましたよ」と笑顔で言うのです。中1の西本さんも先攻でした。彼女は私の授業のあとはいつもクラスの数名で校長室に荷物を運んでくれるのですが、この時彼女は「『先攻後攻挨拶でホイ』は校長先生以外の人に対してやってもいいのですか」と聞いてくるのです。なんと純粋で素敵な反応でしょう。もちろんです。学校全体で、いや、社会全体でこのことが実践できたなら、この世界は今よりもっともっと平和になるでしょう。そんなことを確信した今日この頃ですが、問題はただひとつ。それは、継続できるかということです。(校長 松浦直樹)