【グラウンドでのひとこま】

 2学期末の大掃除の日に、私はグラウンド整備をすることにしました。まずポータブルの耕運機を使ってグラウンドを少し掘り起こします。その後、土をふるいにかけて石や雑草を取り除き、純度の高くなった土を、トンボを使ってきれいにならすのです。地味な作業ですが、なかなかやりがいがあります。土の香りは心地よいし、大地が母と形容される理由がわかる気がします。最近よく見かけるハクセキレイも私のそばでうれしそうに走り回っています。もしかすると仲間と勘違いされているのかも知れません。ただこの作業は一人でやると結構大変で、1時間続けても思うように進んでいないのが実情です。
 作業をしていると、自分たちの担当区域の清掃を終えた飯田さんと杉本さんがやってきて、私のしていることを眺めています。2人は、「先生ひとりで大変」「でもすごい」「私もやってみたい」と言いますので、「やってみますか。楽しいですよ」と声をかけてみると、さっとそばに来て喜んで手伝ってくれました。こういうことは分業すると作業効率が上がります。それにおしゃべりしながらの作業は無条件に楽しいし、協同作業から生まれる連帯意識も芽生えてきて、よいことだらけです。最後にお礼を言うと彼女たちは「私たちの方こそ楽しかったです」「こういう外での作業が好きなんです」「ありがとうございました」と心から喜んでいる様子でした。この、喜びのうちに奉仕作業をする姿に、愛徳学園の伝統と、本物の美しさを見ることができます。それは愛徳生が誠実で親切心に富み、奉仕の心にあふれる姿であり、少し控えめなところがあったとしても、行動力があり、協力を惜しまない姿です。
 ちなみに、このやりとりの1時間ほど前、作業をしている私のもとに1人の小学生が走ってきて「何しているの」と尋ねてきたので、「グラウンドの整備をしているんだよ。やってみる?」と言ってみました。ふるいに土を入れて揺らすだけですが、落ちてきた土がきれいになったことが嬉しかったようです。彼女が私と盛り上がっている様子を見た別の小学生も走ってきたので、彼女にはトンボを渡して私が一緒に引くことにしました。2人の小学生は休み時間が終わると、また風のように走り去っていきましたが、このわずか数分の出来事を、大喜びで担任の先生に話していたそうです。
 奉仕の心や優しさ、そして行動力が、聖ホアキナの精神とともに、小学生から中学生へと確実に受け継がれ、育まれていることを実感した出来事でした。(校長 松浦直樹)