【3学期のはじめに】

 本来ならば新年のご挨拶をここで、と思っておりましたが、御存知の通り1月1日に能登半島で大地震が起こり、甚大な被害が出ています。被災された方々は寒さや失意の中で余震に恐れながら避難生活を送っておられます。お亡くなりになった方々への永遠の安息をお祈りするとともに、被災された方々の心身の傷が一日も早く癒やされますよう心からお祈りいたします。

 被害の全貌はまだ見えてきませんが、報道を見る限り、日に日に状況は深刻さを増しています。マグニチュード7.6というすさまじい揺れで倒壊した建物は29年前の阪神・淡路大震災の光景と重なりました。また、ゆっくり歩いて避難しようとしている高齢者を、たまたま通りかかった乗用車の方がすぐに声をかけて車に乗せた直後に津波が押し寄せてきた映像(その車に搭載されていたドライブレコーダーのもの)を見ると、まさに間一髪でした。緊急事態における臨機応変な対応と人の温かさに心が救われました。1月6日には名古屋にいる私の兄がカリタスジャパンのメンバーと車3台分の救援物資を運んだのですが、道路はいたるところで亀裂が入り、現地にたどり着くことが困難だったと連絡がありました。実際に道中撮影した土砂崩れ現場の映像とカトリック中央協議会のWebページに掲載された石川地区の各教会の写真を見ると、想像を絶する被害であったことに胸が痛みます。現在も極寒のなか、懸命な救助活動やライフラインの復旧作業、そして避難生活を余儀なくされている方々の支援など、身を粉にして働いてくださっている人がいます。

 いっぽう、震災直後からSNSでは書き込みがあいつぎましたが、中にはこの地震と関係のない写真を投稿して救助要請を書き込んだり、あろうことか東日本大震災の際の津波の映像を拡散させたりした人もいました。ボランティアや復興を名乗った犯罪も起こっています。携帯電話やスマートフォンの普及によって、今は瞬時に誰とでも連絡が取れる時代になり、SNSを使えば思いをどこにでも誰にでもすぐに発信することができるようになりました。本来SNSは災害時などの支援に役立つものなのですが、それを自分の利益のために悪用する人がいるのも事実です。そういう人は災害や事故などに便乗して衝撃的な投稿を拡散させることで収益を得ようとするユーザで、こういった『悲劇の現金化』は到底許される行為ではありません。しかし同時にこのような悪意に満ちた行為に対しては、善なる心で、賢明な態度と優しい心で冷静に対応することができるのも私たち人間です。

 SNSを正しく使用することはもちろんですが、今こそ知恵を出し合い、私たちにできることは何かを考えたい新年のはじまりです。(校長 松浦直樹)