【静修修学旅行記】

 63回生(中3)との静修修学旅行から帰ってきました。全員無事に帰着しましたことをご報告いたします。
愛徳学園ならではの行事に「静修」があります。これはカトリック教会で行われる「黙想会」などと同じ意味なのですが、中高生に対して「黙想会」というのも仰々しいですから、かみ砕いて「体験を通して神様と出会う行事」と説明します。それでもわかりにくい人は「行事を通して思いやりや優しさ、そして祈りの意味や自分自身と向き合うもの」ととらえてくれたらいいと思っています。したがって、静修修学旅行というとき、それは単に修学旅行ではなく、平和学習や感動体験とレインボープログラムの学習の成果をリンクさせたいという学園の強い思いが込められているのです。
 
 そういう意味で、この旅行のメインは事前学習にあったと言っても過言ではありません。旅行そのものは楽しくて当たり前です。大切なのは、どれだけ準備したか、そして終わったあとにそれが自分たちの次の日常にどう活かされてゆくのか、ということでしょう。たとえば広島を訪れるには、原爆と悲惨な現実に向き合うことになります。すると当然第二次世界大戦の歴史や戦後の紛争にも目を向けることになります。そのために実施した神戸新聞社の三好正文さんによる特別授業は深い学びの時間となりました。さらに、1歳の時に被爆し、想像を絶する家族の苦悩と自分自身のつらい体験から、原爆を落としたエノラ・ゲイの副操縦士を憎み続けた末に、「憎むべきは戦争であってその人ではない」という思いに至った近藤紘子さんの講演は、もうその一言ひとことが心に響く貴重なメッセージで溢れていました。もちろんその講演が有意義だったのは、担任の佐々木先生や木村先生を中心とするクラスや学年で取り組んだ多くの事前学習があってのことです。私もたった1時間でしたが、授業をさせてもらうことができ、わずかですがその事前学習に参加させてもらえたことが63回生や学年の先生方との一体感に繋がったと思っています。結団式でも伝えましたが、広島はまず10代で行くべき場所です。そしてその次は20代で少しおとなになってから。さらにもう少し成長して社会人としても成熟してくる30代や40代、もしかしたら結婚していたり子どもがいたりする人もいる年ごろでもう1回。何度も何度も足を運び、その都度発見のある場所です。
 
 旅行前日のお昼休みには、昼食前に代表の西本さんと松下さんが職員室にやってきて、先生たちの前で挨拶をします。以前も愛徳生の礼儀正しさはお伝えしましたが、こういう時の愛徳生は非常に慎ましく清々しいものであります。職員室内で全先生の注目の中で原稿を見ずに挨拶するということは、相当なプレッシャーではないかと思うのですが、自信をもって話す姿は実に立派でした。先生方も沈黙のうちにその二人のメッセージを聞いているのですが、そんな時、私は不謹慎にもずっとカメラを回してその様子を撮影していました。二人のメッセージはこうです。

 「わたくしたち63回生は明日から広島・津和野・萩へ4日間静修修学旅行に行ってまいります。広島では平和について、萩・津和野では殉教の歴史について、事前学習で学んだことを実際に体験し、深めたいと思います。この経験がわたくしたちにとって、素晴らしい思い出となるよう、学年目標である『ポジティブ』を忘れず、メリハリをつけ、愛徳生らしく過ごしたいと思います。今回の修学旅行で学んだことを、これからの学校生活に活かし、成長した姿をお見せすることができたらいいなと思います。」

 一度もかまずにスラスラと話す様子を見て、これこそが愛徳生のプレゼン力の結実だなと、私は妙に感心してしまいました。

 ちなみに愛徳学園は、先生たちも大変礼儀正しく、思いやりがあって、出発の前日は多くの先生がお帰りの際、校長室をのぞいては「無事に行ってらっしゃいませ」とか「元気に帰ってきてください」などの声をかけてくださるのです。もちろん、帰ってきたときも同じです。素敵な文化ですね。
 
 さて、そうして3泊4日、ケガなどはもちろん、体調不良の生徒をただの一人も出さずに無事戻ってこられたのはそれだけでも奇跡的なことだと思います。学年リーダーの東さん・西本さん・松下さん・山内さんをはじめ、班長の森脇さん・本村さん・稗田さん・森山さん・東原さん・永沼さんたちを中心とする、秩序を持った各研修の様子と、何よりも63回生全員の姿を皆さんに見てほしいと何度も思いました。今回は保護者限定のコーナーではありますが、連日100枚以上の写真をアップすることで、少しでも旅行の空気を味わっていただけたのではないかと思います。
 
 広島を出発点として、乙女峠に登って殉教の歴史を学び、津和野教会で御ミサに与かり、萩では松下村塾や手びねり体験の後、小京都ともよばれる萩の街を自由散策し、最後は日本最大級のカルスト台地の秋吉台および秋芳洞を見学するという、なんとも贅沢で洗練された旅を満喫することができ、愛徳生は本当に幸せだなと思いました。私も63回生とここまで絆が深まり、ただただ感謝です。

 この旅行の成果?それは明日からの63回生の姿を見ることで、肌で感じてください。(校長 松浦直樹)