「理科の本 大集合!」(中学理科)

中学理科の取り組みを紹介します。

 

ー 楽しみながら、本と生徒を結びつけたい ー

 

自分が好きな理科に関係する本の魅力を多くの人に伝えるために、本につける”帯作り”を中学1年生から3年生を対象に行いました。

「じっくり一冊本を読み、帯を作り、展示し、さらにその本を借りる」という循環ができれば、本に親しみを持ち、今まで以上に本を読む習慣がつくと期待しています。

中学3年生の冬休みの課題

「読書する人だけがたどり着ける場所」を元に、冬休みの課題を設定。

1つ目は想定する読者は?その理由は?この本を読むとどう変わるのか、どんな価値があるのか、どんな体験ができるのか、本を読むポイントを探す課題を出しました。

2つ目は、本の中から、好きな文章を3つ探す課題です。この目的は、探しながら読むことで、批判的に、自分の感情や考え方と照らし合わせながら深く読むことができます。

 

 

3つ目は、 帯に使える文章を20個作るという課題です。帯に乗せる文章を1個だけ作るのではなく、20個作った上で、吟味して最高のものを帯に使う、という課題でした。

 

中学3年生はさらに課題があります。それは、30秒程度の紹介動画を作るという課題です。動画用のカードを作ります。吹き込む原稿を考え、文章を練っていきます。その原稿をカードに吹き込み、提出するという流れです。

下は実際に生徒が提出したものの一部です。

 本を借りに行く

課題を伝えた上で、生徒が図書館で本を借りに行きます。そのとき、

「初めて本を借りました。この本はどこに持っていけばいいのですか?」

「この本は面白そうなのに誰も借りてないんですか?」

と生徒から声がありました。

生徒が理科の本に出合う瞬間に立ち会うことができました。

本を読み、紹介する課題が与えられたので、生徒達は真剣に本を選んでいました。

課題の回収・展示

本、本の帯、貸出カードをつけて図書館に返却します。

その後、司書の先生に帯をつけた本の展示をお願いしました。

本の 紹介動画を公開できるように

ICTの利点は時間、空間の制限がなく、いつでも、どこでも、何回でも見ることができる点です。

動画を作れば、まだ本を読んでいない生徒に向けて、いつでも、発信することができます。

課題で作った紹介動画ですが、提出箱に提出され、通常は管理している先生しか見ることができません。

そこで、Googleドライブを利用しました。

動画をGoogleドライブに保存。

リンクを知っている人全員に共有できるように設定。

そのリンクをQRコードにし、カメラで読み取れるようにしました。

これで、QRコードを読み取ると、本を紹介した動画を再生することができます。

スタンプラリーの実施

以前、星空教室というイベントで、中学2年生が宇宙に関する本のポップを作りました。

図書館に置いていますが、ポップと本が一体化し、芸術品のようになってしまい、本を紹介し借りさせるという本来の目的が達成できていないことが気がかりでした。

そこで、今回の帯を作る課題については、本を借りて読むことをゴールにしたいと感じていました。

成果が分かり、楽しんでもらえるように、帯を作った後はスタンプラリーをすることを企画。

スタンプラリーの台紙作りを生徒に依頼し、2種類の図柄ができました。

帯付きの本を借りに行く

図書館に紹介コーナーが作られたので、本を借りに行きました。

帯やタイトルに惹かれ、興味のある本を手にとっています。

中学生が借りた本なので、大人が選ぶ本よりは手に取りやすいです。

また、帯を作ったので、他の生徒がどのように作ったのか、参考にできます。

さらに、自分の紹介した本がなくなっていることは、誰かが本が借りていることを示しており、成果が目に見えて分かります。

スタンプラリーを実施し、最初の一冊は授業中に借りにいきました。

2冊目からは、強制ではなく生徒の自主性に任せようと考えています。

まとめ

現在進行形で企画を進めているので、スタンプラリーを達成する生徒が何人いるのか、この企画をきっかけに理科や本に興味を持ってくれた人が増えたか、本を借りる習慣がついたかは未知数ですが、関心を持ち続けられるように、関わりたいと思います。

今回の企画を進めていく中で、生徒・教員間で

・帯の作り方のノウハウ

・スタンプラリーのノウハウ

・動画をGoogleドキュメントを使い、QRコードで発信することができる

の経験が得られました。

 

また、今回の企画で行ったことは、要素に分解をすると、

・理科系の本を読む

・書いてある言葉、内容を理解する

・言葉、絵で帯に表現する

・動画で30秒にまとめ表現する

・QRコードにして公開する

が挙げられます。

結果的に、理科の本に触れる=サイエンス(Science)、帯を作る=美術(Art)、動画を公開できる状態にする=技術(Technology)、の要素があり、STEAM教育としての側面がありました。

 

また、本校が実践するRainbow Programにおける、7つの力の育成の観点でとらえてみると、7つの力のうち、

 

・体力・忍耐力

本1冊を読みきる、新しい事にチャレンジする体力・忍耐力

・思考力

幅広く、物事を深く考える、著者の考えを理解する思考力

 

・コミュニケーション力

積極的に著者の主張と関わり、驚きや発見といった自信の感情に向き合い、

能動的、批判的に本と対話しながら読むコミュニケーション力

 

・プレゼンテーション力

本の中から重要な箇所を抜き出し、整理して分かりやすく帯にまとめる

プレゼンテーション力

 

の4つの力の育成に関わることができました。

今後の展望

今後の展望としては、図書委員や全校委員文化体育が主催側にまわる、対象を他教科の本にする、新書限定で帯を作ってみる、など目的に合わせてアレンジが可能だと思います。

今後も、本に親しみを持ち、理科に興味を持ってもらえるように、努めてまいりたいと思います。